蔓薔薇
駅のトイレで顔を荒い
口を濯いだ私を、貴方は
ずっと、待っていてくれた。
  
「本当に大丈夫?
 顔色は、さっきよりも
 マシかな」

「ありがとうございました
 
 なんだか
 ご迷惑をかけてしまって
 ごめんな・・・」

貴方は、私の頭を優しく
撫でて言う。

「気分が悪いなら
 そう言えば良かったのに
 
 俺も気づいてあげるどころか
 帰れなんて言ってごめん」

罰悪そうに謝る貴方は
さっきの雰囲気とは違い
 
母親に叱られた
子供のようだった。

貴方の冷やかな目線が
一瞬消え

優しい仕草に変わる。
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