【短編】きみとぼくの未来図
「…は?」
早紀は目をぎゅっと閉じて耳を塞いでいる。
今更ながら、ぼくは早紀と話が噛み合っていなかったことに気付いた。
早紀はぼくが彼女に別れを告げようとしている、と勘違いしているようだ。
「ぷっ、」
早紀の余りにも必死な顔に、つい吹き出してしまった。
早紀はバカだなあ。
そんな、ぼくがきみを離すことなんてないのに。
だけどそんな早紀が可愛くて仕方ない。
どうやらぼくは重症らしい。
ぼくは早紀にゆっくりと近付いて、早紀の肩を叩いた。
「早紀、聞いて」
あやすように言うと、早紀は静かに手を下ろして、ぼくの言葉を待った。
目は依然きつく閉じられている。
ぼくはポケットからリングの入った箱を取り出した。
不思議と、不安はなかった。