偽りの結婚(番外編)



ギシッ…――――

ラルフが座ったベッドが軋む。



「遅くなるから寝ていていいと言っただろう。」

「…………」


確かにラルフは先に寝ていていいと言った。

けれど、その理由は聞いていない。




「なんで……」


言いかけた言葉を途中で飲み込む。




「え?」

「なんでもない……」


先を促す様なラルフの言葉に、思わずそう言った。


“なんで帰りが遅いの?”


そう言葉に出来なかったのは、うっとおしいと思われたくないから。

ラルフだって一人の時間は欲しいだろうし。

帰りが遅いくらいで一々こんな事を聞かれたら、きっとうっとおしいと思う。

だからこそ、聞けなかった。




「もう寝よう。」


ラルフが私を抱き寄せて、横になる。

今日も抱きしめるだけ……



「おやすみ、シェイリーン。」

「おやすみなさい…」


今日も虚しい声を寝室に響かせ、夜は更けていった。




< 429 / 547 >

この作品をシェア

pagetop