ジキルハイド症候群



「あれは、凄かったからね」

「―――鬼っているんだなって思いました」


今思い出しても涙が出てくる。
自分の思いを打ち明けてからもこうして大和さんと会っていた。
あたしにとって大和さんは兄みたいな存在であったし、嬉しいことに大和さんもあたしを妹のように思ってくれていた。
血の繋がりはなくともあたし達は兄妹だった。


兄妹が会うのに許可など必要ない。
あたしは、普通に大和さんと会っていた。蒼真には何も言わず。


それがいけなかった。


ある日、大和さんと広場で話していたら、怒りを含んだ声で名前を呼ばれた。
見ると眉を吊り上げ怒っている蒼真が立っていた。
あの睨みと恐怖は絶対に忘れないと思う。

蒼真は、何を勘違いしたのか大和さんに殴りかかろうとした。
それを止めようとすれば、あたしは怒鳴られ、何故怒鳴られたか分からないあたしは恐怖に涙を流してしまった。


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