この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-


桜井家の兄弟にしろ、尭くんだって、幼馴染みのお兄さんなのだから。



“のん…”

あの痺れるような甘い声で呼んで、どうしようもないほど私を翻弄させた祐くん。



ベッドテクなんて言葉で片付けられないくらい、心ごと攫うような抱き方で。


どうやら柚ちゃん発言を覆す激しい体験を、成り行きでシちゃったとは。



まさに一生の不覚であり、脳内を占有されてしまった大惨事の現在――



「ハァ・・・」


「望未ちゃん、溜め息は…」


「あ、すみません…!」

グルグル駆け回って止まらない思いから、店頭に立ちながら溜め息をついてしまった私。


ああダメすぎる…、仮にもショップで溜め息なんて――



「でも、この状態だとねー」

猛反省で謝罪を入れると、銀座店の店長を務める利奈さんが優しく笑ってくれた。


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