お姫様の苦悩
エレベーターが止まり、真っ先に下りてツカツカと歩き出す。





大人げないと思うけど、無視されて当然。





「蜜姫ちゃーん。」





鞄から鍵を出すため、下げてた頭を上げると私の部屋の前でヒラヒラと手を振る人。





「どうしたの!?」


「会いたかったから。」





小走りで駆け寄りそう聞くと、フッと笑い体にのし掛かってくる。




「ちょっと重いよ。随分待ったんじゃない?ほら、上がって。」





体を押し返し、鍵を開けて部屋へ促す。





「誰、アイツ?」





玄関を閉めた瞬間、くるりと振り向かれ真剣に聞いてくる。





「アイツ?」


「蜜姫ちゃんの後ろにいた女連れの野郎だよ。立ち止まってずーっとこっち見てたけど?」





ああ――――…譲さんか。





別のところに意識がいっちゃったから、すっかり忘れてた。





「隣に住んでる人。」




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