恋ノ神
人間と幽霊

2025年・2月12日

「いやっほーーい!」

堂の中に私の歓喜の声が響く。
と言うのも、先ほど恋を叶えたカップルで丁度星が10個揃った。
これで私の願いである『10年間の休暇』が手に入る。

「よーし、これでこの10年間は遊んでられるぜ・・・うへへへ」

自分でも卑しいと思うほどの声が出る。
さっそく星を使う事を試みる私だが、その邪魔に入るかのように、新たなる依頼者がやって来た。

−櫛灘 友紀。
私の友人である櫛灘姫と同じ字だ。そう思いながら友紀を見る。
19歳だが背は小さく、髪は女優に並ぶほど長くて綺麗だ。
化粧している様子もないが、それでも瞳が輝いて見える。少し焼けた肌は目を余計に際立たせ、私にはそこから優しさが滲んでいるようにも見えた。

「幸(さち)さんと両想いになりたいです!」

名前からして女ではないか思ったが、当たり前で違っている。
今回は探しに行くのが面倒臭いため、取りあえず検索してプロフィールを見ることにした。
…しかし、どの人間を見ても、この辺りに幸という男は、生きている者は存在していない。
おかしいな、と思いながら友紀の思考波を探って見る。
彼女が思い浮かべていたのは、無造作に黒髪を伸ばした男性。
目が大きく、痩せても太ってもいなく、鼻は整って綺麗な顔立ちだ。顔からして20歳前半と伺える。とても落ち着いた雰囲気を漂わせ、現代的に言えば「クールなイケメン」と見える。

「ふぅん、いい男じゃないか。」

そう呟きながら思考波の詮索をやめる。





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