小悪魔カレシ。
PROLOGUE〜幼い日の記憶〜


放課後の教室。

燃えるような夕日の下、辺り一面がオレンジ色に染まっていく。


そんな中──、

教室の端っこで膝を抱えてうずくまっている小さな男の子を見つけたあたし。

情けない姿に思わず溜息をつきながら、つかつかと彼に歩み寄った。


「奏汰ってば、まーたいじめられたの?」

「……うん」


声をかけると、びくん!と身体を震わせてあたしを見上げた奏汰。

そのおっきな目は潤んでいて、ぐしゃぐしゃに濡れた顔が痛々しい。


まるで、小動物みたいだ。

か弱くて、仕種のひとつひとつがいちいち可愛い。

そんなだから……
いじめられるんだよ。

皆、奏汰の可愛い反応を見たいだけ。


「だらしないなぁ!男ならガツンと言い返してやりなさいよ!メソメソしてばっかみたい!」

「ぅ……」


声を荒げるあたしに気圧されて、ますます顔を歪める奏汰。

また泣く。
ダメだこりゃ。
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