夢幻の姫君

やってきた日常と恋心

翌日、美羅が行ったように誰も覚えていなかった。

 美羅が行ったのは忘却と偽りの記憶を入れる事。
つまりは記憶の改ざん。何も無かったことにして帰した。

ののは誰も覚えていない事に安堵し、ご機嫌であろう彼女を見た。

 ののが見た美羅は眉間にしわを寄せ、考え込んでいた。
その後ろの隼人は何故か不機嫌で、オーラが怖かった。

考えている美羅を放っておき隼人に話しかけた。

「崎坂君、どうしたの?」

そう話しかけると、困った顔になりながらこう言った。

「クーが、いや、美羅が昨日から変なんだ」
「変?」

考え込んでいる様子はわかるけど、別に変ってわけじゃない。
・・・変わってはいるけれど。

「態度が、おかしいんだ」

そう言って、隼人は机に伏せた。
 重症なその様子に苦笑いしながら、詳しく訊く。

「どんなふうに?」

そう言ったら、がばっと顔を上げて私を見た。
 
その瞬間、あぁと思った。美羅が彼のことを犬っぽいって言っていた事を。
 今の顔はご主人様にかまって貰いたいという顔をしている。尻尾があるなら床で垂れているだろう。

「俺にだけ冷たいんだ!! 他は普通なのに俺だけ目を合わせないんだ」

それを訊いてニヤッとした。
 崎坂君には大丈夫、その内わかると言って2人を見守る事にした。

鈍感かよ、相手の気持ちには。 わかり易いのに。
 思ったことは、あえて言わなかった。
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