夢幻の姫君
3章: 悲しい過去

始まり

私が物心がついたとき、私は施設で生活していた。
 親がいない子、いわゆる孤児の子供たちと一緒に生活していた。
私がそこの親代わりである“先生”にいつも言われていた言葉は

「あなたの親は事情があってここに預けているだけなの。いつか迎えに来るわ」

そのころはそれを信じて疑うこともしなかった。今思えば、託児所でもいいと思うが。
 親というものは先生みたいな優しく暖かい存在だと思っていた私にとって、迎えに来てもらえるを楽しみにしていた。

 その人は、ある年の冬に私を迎えに来た。

「3年もほって置いてごめんね」

彼は、私に謝罪をした。涙を流しながら。そうか3年もここに居たのかと思いながら。

「お父さん?」

会ったらそう言えと、この人がそういう存在なんだと教えてもらっていた私はそう言った。
 それを聞いた“お父さん”は、もっと泣きそうな顔をして、私をギュッと抱きしめた。

先生に抱きしめられることはあったけど、先生以外のしかも男の人に抱きしめられるのは初めてで、緊張したけどうれしかったのは覚えてる。

 

 彼の涙の意味を知らないまま――――
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