水晶玉は恋模様
放課後、私と圭子はプリクラを撮る約束をして、別れた。
望はプリクラには興味が無いらしい。
そこらへんが秀才らしいなぁ、と思いつつ、いつもプリクラを撮るのは圭子と2人だ。
私は重たい鞄を引きずりながら、必死で歩いていた。
まったく、只でさえ疲れるのに学校から家は遠い。
こんなんでプリクラ撮る元気が余っているのだろうか。
そんなことを考えつつも、私は歩幅を大きくし始めた。
圭子と香織以外に、特に気の合う友達は居ないので、私は帰り道はいつも1人。
高校ではお互い、別の友達を見つける約束をしたけど、それもどうやら果たせなさそう。
ふと甘~い声が聞こえてきたので、私は足を止めた。
路地の端っこから、茶色いセーラー服が見え隠れしている。
どうやら違う高校の制服のようだ。

「高沢くぅうん」

その甘~い声は、『高沢君』という名前を連呼している。
はて、高沢ってどこかで聞いたな……。
どこだっけ?そう、今日いちごジャムをくれた奴の名前だ。

「高沢くぅううん。もっと毎日会いたいよぉお」

何てバカップルなんだ。
うちの学校の高沢は、絶対そんな事しなさそうな奴だし、
きっとあんな女子と縁は無いだろう。
そう思って、路地を通り過ぎようとしたら。

「でも、仕方ないだろ?学校、違うんだしさ」

そう答えた甘甘の声は!間違いなく!
高沢のものだった。
ただの高沢じゃない。うちの学校の高沢だ。
私は思わず足を止め、路地をこっそり盗み見た。

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