あひるの仔に天使の羽根を
 
 

櫂様達も気づいているだろうか。


旭と月という双子は何かおかしい。


姿形は愛らしい天使。


純真さはある。


だが。


滲み出るものが――


時折覘くものが――


私と同じなのだ。


血溜まりの中で、己の力を求める、あの頃の私と。


私が抱き続ける狂気と。


大体。


"約束の地(カナン)"における勢力の1つを、あんな小さい子供が背負うということさえ異常なのに、生き抜いているという事実が実に不可思議だ。


利発だから。


そんなひと言で片付けられないものを感じる。


聡明で大人びた兄の旭と、天真爛漫な妹の月。


旭の物言いは、完全に"誰か"に影響されている。


"~らしいです"


"~のようです"


"~だそうです"


それ故に、旭個人の意思が見えない。


あんな小さな子供に、意思を求めることは罪なのか。


私はあの双子に違和感を感じている。


それがあまりにも曖昧でぼんやりしていて。


はっきりとした輪郭を見出そうとすれば、なぜか私の中で警鐘が鳴り響く。



『はっきりさせるな』と。



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