あひるの仔に天使の羽根を

こんなあたしなんてほっとけばいいのに。


恩を仇で返すような、そんな薄情な女なんて捨てればいいのに。


だって、普通はそうでしょう?


自己都合で簡単に切り捨てるなんて、最低な奴のすること。


だけど――


――僕は、終わることは考えていないんだよ?


――……逃がさねえよ?


やっぱり簡単ではなかったね。



涙、出ちゃうとこだった。



櫂だって判っているよね、きっと。


あたしを見ないのは、何も言わないのは…怒っているの?


ははは。櫂との最後は……後味悪いね。



――うわああああん!!


初めて会った時、櫂は泣いていた。


弱々しく泣いて、消えそうな…儚いその様を、あたしはどうしても見過ごすことが出来なくて。


――んんと、芹霞…ちゃん? ありがとう。


にっこり笑ったその顔が、あまりに綺麗な天使の顔で。


ああ、この子を守るのが使命だと思ったの。



櫂と出会ったことを、運命だと思ったの。



絶対離れない、強い絆。

何があっても揺るがない、絶対的な絆。



崇高で、神聖な…穢れなき関係を――

櫂と持ちたいと思ったの。



ごめんね、櫂。

ごめんなさい。




あたしが"永遠"という名の鎖で縛り付けすぎた。


あたし自身、異常な程拘り過ぎた絶対的な絆。



それがもし――


櫂の中の"誰か"に対する贖罪だったとしたのなら。



櫂はあたしを蔑むよね。


櫂があたしを救ってくれたのは、その"永遠"によるものだとしたら、


あたしは最初から櫂を裏切っていたことになるもの。


だからね、全てをなかったことにして、あたしから"幸せ"を消さないと。


どんなに辛くても。


あたしは、罪を贖い…真実の形に戻さなきゃ。




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