あひるの仔に天使の羽根を
 


何故に――

ありえないと思ってしまったのか判らない。


ただ酷く切なくなり、酷く胸が痛んだ。


それはまるで、芹霞さんを眺める櫂様や玲様、馬鹿蜜柑を観察している時のような感情で。


そう、櫂様にとっての慶び事に、

どうして私はそんな感情を抱いてしまったのか。


とにかくも、息が出来なくて苦しく、そして2ヶ月前体感した"涙"というものが、再び出そうな狭窄感に喘いだ。


そんな私を見たのが馬鹿蜜柑で。


馬鹿蜜柑は私の姿を見ると吃驚したような顔をした。


失態を晒してしまった。


私は、馬鹿蜜柑に見せたくなかったけれど、

逆に見せつけてやりたい気もした。


櫂様と芹霞さんを。


お前などが入る隙間はないのだと。


見せつけて絶望に喘ぐ馬鹿蜜柑を、

まるで私自身のことのように投射して、

そして説明つかないこの苦痛を断ち切りたかった。


そして私は玲様の元に行けば、玲様はただ天井を仰いで何かを考え込んでいるのか、ぴりぴりとした空気を纏っていた。

居ない3人の中で、1番先に戻ってきたのは芹霞さんで。


その泣き出しそうな顔に私は訝った。


< 163 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop