あひるの仔に天使の羽根を

「!?!」


優しくまさぐるように動くその指は――


あたしの各指の間に収まった。


所謂、恋人繋ぎというもので。


何故にそんな繋ぎ方!?


しかも何かを訴えるように、ぎゅっと力を入れてくる。


「れ、玲くん……」


思わず玲くんを呼べば、


「んー? 何?」


何ともないというような声。


そうか。


何ともないことなのか。


「い、いいえ、別に……」


きっと過剰反応するあたしが変なんだ。


暗闇に不安定になっているから、きっとあたしがおかしいんだ。


本当にあたしは、男性に対する経験値がなさすぎるから。


しかも相手は優しい玲くんだし。


突然"男"を感じてびくついたなんて、あまりにも失礼で。


何が普通で何が異常で、

何が幼馴染で何が"男"で、

何が正しく何が間違っているのか。


今は特に、区分けの是否が判らないから――


暗闇だから誰にも見えないし。


あたしは割り切り、恋人繋ぎのままで歩いた。


小さいときに還ったようで妙に嬉しくもなる。


人の温もりは、闇の中ではこんなに心強いものなのかと、

あたしは口笛を吹きたいような心地になってきた。


どうせ、見えていないんだし。


……やっぱりあたしは抜けていた。


見えないのがあたしだけなんだから、


あたし以外は、見えている。


そう――


櫂も煌もじっと見ていることに、全く気づいていなかった。



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