あひるの仔に天使の羽根を
 

煌のぶらんとした腕に絡まる腕輪が光る。


赤い石が綺麗な腕輪。


8年前、緋狭姉がよくしていた腕輪。


それ以降も、襦袢の姿でもつけていたことを知っている。


あんなお気に入りを、煌に託すくらいだ。


煌は緋狭姉を怖れるけど、緋狭姉は煌をかなり可愛がっている。



ごめんね、緋狭姉。



あたし達の可愛い煌がこんなになっちゃったよ。


あたしを庇ってくれたんだ


もうね…動かないんだよ。



あたしの落とす涙で光る腕輪。



緋狭姉なら、こんな時どうする?


逃げ場のない状況に陥ったら、どうしてる?



あたしは――


煌を抱き締めるしか出来ないの?



あたしは煌の手を取り、熱い身体を抱く力を込める。



シャラン。



あたしのネックレスが、握り締めた煌の手の…腕輪に触れて、か細い音をたてた。




食卓が大きくこちらに傾く。





あたしが更に煌をぎゅっと抱き締め、


これから来るだろう衝撃に目を伏せる――その直前。






突然――






「え!?」










首にある、櫂の石が発光した。






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