あひるの仔に天使の羽根を
 

「あの…櫂様や玲様は何処に…」


桜ちゃんはあたりをきょろきょろしながら聞いて来た。


「ああ、桜ちゃんは知らないんだっけ。櫂は須臾さんに誘われて、須臾さんと一緒に式典行ったの」


少しばかり、恨めしげに"須臾"に力を込めて。


「で、玲くんは由香ちゃんと一緒に少しだけ観客に」


「……!!!」


桜ちゃんは――


はっとした顔をして、今にも飛び出そうとした。


護衛任務を果たそうとしている。


あたしは咄嗟に桜ちゃんの長い髪を引っ張ってた。


というか……桜ちゃんはすばしっこくて、翻る髪しか捕まえることが出来なかったから……というのが正しい。


桜ちゃんが短い声を上げ、あたしは慌てて髪を離した。


「髪は女の命なのに、ごめんね、桜ちゃん」


この文句は正しいのか……は、さておき。


「櫂は"断罪の執行人"だかいうのが手出しできない須臾さんと一緒だし、玲くんは観客兼ねて、煌の手がかりを探してくれてる……と思う」


桜ちゃんの大きな目がくりくり動いた。


考えている。


「それに"断罪の執行人"とかいうのは昼間は出ないみたいだし、この須臾さんの棟に居れば安全みたいだし」


「……各務須臾とは何者なんですか?」


まあ――


そうだよね。


「何者なんだろう?」


あたしはよく判らない。




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