あひるの仔に天使の羽根を

そして乱れた髪を隠すように、同色の布を垂らしたようなかぶりものをつけて、胸元には銀に光る聖なる十字架を。


格好は間違いなく修道女で。


せ、性食者がこんなことを!!?


脳内で、いささか変換ミスが起こったけれど。


見てはいけない禁忌の場面。


立ち去る女と同様に、部外者のあたしにも迅速な退散が必要だ。


知らない。


あたし見てない。



回れ右をした時――、



「……うぎゃっ」


散水用のホースがあったのに気づかず、お約束のように躓いて転んでしまった。


しかも変な声まで披露して。


慌てて口を押さえたけれど、



「誰!?」



時は既に遅し。


しまった!!!


あたしはこの場をどう切り抜ければいいのかだけを必死に考えた。


そして――


「ホーホー」


梟の鳴き真似をしてみる。



「……。

昼間なのに、梟なんてね」


艶めいた男の声。


しまった。


どうして咄嗟に思い浮かんだのが、梟だったのか。


あたしの頭はパニック中で。


「……次はアヒルか。家で飼っている記憶はないけどね」


ああ――


自滅。



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