あひるの仔に天使の羽根を

「え? あたしは普通に…」


予想もしていなかった急すぎる展開に、あたしの額から汗が流れる。


「この通路は、"罪の洗滌"の修道女だけが知り得る隠し通路。反対側の終着地点は各務家だ。これ以外の道では、日が落ちるのを待たない限り行き来出来ない。

お姉さん、この通路以外にどうやって各務に入ったの?」


詰問するような金色は、無慈悲なまでの冷たさがあり。


「あ、あたしは…」


司狼くんの手を離し、じりと1歩後退した。



「お姉さん。

"罪の洗滌"の使命を帯びていないくせに、どうしてその服を着て教会に行こうとするの?」



バレテル。



「修道女イコール教会なんていう図式は存在しない。少なくとも"約束の地(カナン)"においては、誰もが知っていることだけど。幾らお姉さんが馬鹿でもね」


あたしは更に1歩退いた。



「ねえお姉さん。

この地で重罪は"嘘をつくこと"なんだ。

嘘をついたらどうなるか、知ってる?」



愉快そうに笑いながら、1歩近づく司狼くん。


「見逃して上げようかとも思っていたんだけれどね。

だけど、お姉さんが悪いんだ」



途端、その瞳は凍り付く程に温度を下げて。




「"陽斗"は生きたかっただろうね、お姉さん?」




――どくん。






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