あひるの仔に天使の羽根を


「だから女って嫌だよ。泣けば赦されるの? 贖罪してるとでも思ってるの?
馬鹿馬鹿しいよね」



陽斗、ごめんなさい。



――どくん。



「どうしてこんな女が選ばれたのか僕には判らないや。理解も出来ない。こんな愚かで弱い女が……」




ごめんなさい、陽斗。




「だからね、お姉さん」




目の前の陽斗があたしの腕を掴んで引き摺った。



あたしはただ泣き崩れることしかできなくて。




「罪人は罪人らしく、罪の裁きを待とうよ」




気づけば。



開け放たれたドア。


目の前にはぽっかりと黒い穴。



「"罪の洗滌"…"生き神様"が気に入ると良いね。例え羽根がなくても、お姉さんの血肉が"生き神様"の力の糧となるのなら、陽斗も少しは報われるんじゃない? あははははは」



そしてあたしは――


陽斗に突き飛ばされ、階下に転落する。



痛いとか、恐いとか、そんな感覚はまるでなく。



ただひたすら、闇の底に転がり落ちる。




「また会えるといいね。

まあ……生きていればの話だけれど」



小さくなっていく陽斗。



「…選んだのは、お姉さんだよ?」



――汝、選べよ。




「ねえ……せり?」




――せり。




ドアが閉められた音。





あたしは――



闇に沈んだ。





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