あひるの仔に天使の羽根を
 
「ほら、芹霞!!! 行くぞ」



ぐらぐらする頭を抱えるあたしとは対照的に、煌は本当にすっきり爽やかBOYで。


1人勝手に晴れ晴れとしてしまって。




「――絶対、忘れるなよ。


本気で信じろよ?


俺がお前に惚れ込んでいるってこと」




ご丁寧に念まで押して。




「俺のしたかった真剣な話は以上!!!


芹霞、聞いてないフリだけはすんなよ!?!


スルーは無効だからな!!?


判ったな!!!」



そう、真っ赤な顔で何故か威張られれば、



「は……はい」



勢いに呑まれて、思わず頷くしかないあたしだったけれど。




後で――考えよう。


今は駄目だ。


頭が真っ白で何も考えられない。




夢かもしれないし。



ただ思うのは。


煌とぎくしゃくしたくないということだけで。



煌が笑って今までどおりに接してくれるのなら。


あたしだって今までどおりに振舞いたい。



あたしの中の煌の位置は、変わるものではないのだから。


恋愛如きに、煌を失いたくない。


煌はいつだって、煌だから。

今は――


そう思うことにした。




そう思わないと、やってられない。



あたしは恋愛偏差値が全くない女だから。




何故か――


櫂の憂えた顔が、脳裏に横切った。



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