あひるの仔に天使の羽根を
 

『ついにオレンジのワンワン、ヘタレ返上したの? ナリフリ構わず言っちゃったんでしょ。ヲトメゴコロに響かなきゃ、口べたな君はただのヘ・ン・タ・イ。おっと~、それから発情と我慢は程々にね。え~だってさ、欲求不満が祟るとワンワン、香水女達を壊しまくるって有名だし☆』


「……玲。俺すんげ~、切り刻みたい」

「OK」

「待ってってば!!! もう少し読もう、ね?」



『チース、芹霞ちゃん、元気~? 怪我してない? いい加減君に会ってないから寂しいよ~。我慢も限界だよ~。顔見たいのにさ、入院中だってアカが許してくれなくてさ、働け働けって酷いんだ~。義理のお姉さんになるって思えば気が重いよ、でもいいもんね、楽しみはとっとくから……何って…君のハ・ジ・メ・テ☆』


「……煌。許可して上げる。切りまくって外に蒔いてきて!!!」

「おう!!!」

「そうしたいのは僕も同じだけど……これで最後だ」



『ここまで読んだら、きっと芹霞ちゃんは目を丸くさせてレイクンを見ているよ。いやん、エッチ』


は?


僕は芹霞を見た。


芹霞も僕を見て――



「玲くん、ふ、ふふ服を着てよッ!!!」


僕の上半身には、肌を覆うものは何もなくなっていた。



『PS 芹霞ちゃんのために君の服を用意しておいてあげる。あの痩せた女の子に言ってね。いや~でも、偶然君が倒れて居た時、偶然あの子が居て、偶然包帯があって助かったよね~。偶然侮りがたし!!!

偶然通りかかったアオより☆』



「玲、こんなのさっさと捨てちまおうぜ!!!」


僕は考えていた。


偶然という言葉が似つかわしくない、目的のためだけに動くあの氷皇が、何故こんなにも"偶然"と書き散らす?


というより、この人を揶揄するだけの下らない文章を、何故あの男が書いた?
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