あひるの仔に天使の羽根を


本当に今更。


俺は煌に対して――


嫉妬に胸が焦げ付きそうだ。



俺は胸に手をあて、服地を荒く掴む。


よろける体。



冷たい壁に背中を凭れて、ぎりぎりと歯軋りをした。


憎みたいのに、憎められない幼馴染。


――俺は、そこからじゃねえと、何も始まらない。


決死の覚悟というように。


あのタイミングでわざわざ俺にそう宣言した煌も、先に芹霞に想いを告げたという俺に煽られて、相当切羽詰ったんだと思う。


だけど。


余裕ないのは俺だって同じ。



――離れていよう?



煌は、そこまで俺が拒まれた事実を知らない。




芹霞は――


きっと煌なら拒まない。



俺だから拒まれる。



その理由が何かを理解できない俺。


だからそんな"俺"を理解させたい俺に遠坂は言った。



――押し付けがましいんだよ。


無意識に唇を噛んでしまっていたらしい。


口腔内が鉄の味がする。




< 638 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop