あひるの仔に天使の羽根を
 

切なくて、苦しくて。


芹霞の心に止まれない俺の想いを、どうしても刻み込みたくて。


言葉で駄目なら、例え身体だけでも。


ほんの少しでも、俺に触れて貰いたくて。


俺の想いに気づいて貰いたくて。


芹霞の後頭部を引き、芹霞が俺を見上げるような角度にさせて、


「真剣なんだ……」


俺はその揺れた瞳に、真っ直ぐに想いを注ぐ。


後頭部を固定させて、逃げさせない。


「なあ……芹霞…」


そして俺は。


捕えるつもりが、芹霞の黒い瞳に囚われて。


縛られたように魅入られて。


少し戦慄(わなな)くその桜色の唇に、俺の唇を……。



「……煌っ!!!」



現実に返したのは、前方で振り返らぬまま怒鳴りつけた玲で。


俺は。


玲の存在を忘れていたことに気づく。


駄目だ。


芹霞に告げてから。


少し想いが溢れれば、俺は今まで以上に周りが見えねえ。


今までの俺の躊躇いも理性も、瞬間的に脳裏から消える。


誰が居ても、所構わず、俺の想いをぶつけたい俺がいる。


状況判断が出来ない俺がいる。


やばい、このままじゃ。


本当に暴走する。


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