あひるの仔に天使の羽根を
 
「………ふうん、成程ね」


突然、嘲るような笑いを向けたのは久遠で。


腕を組んで私を見下ろす瑠璃色の瞳には、侮蔑の色が濃くて。


「所詮は、ありきたりの唯のくだらない男だったということだ、紫堂櫂は」


「何だと!!?」


馬鹿蜜柑が片手で、久遠の胸倉を掴むが、久遠は怯んだ様子を見せない。

瑠璃色が更に冴え渡る。

そして。


目の前の煌ではなく、此処には居ない櫂様に向け、久遠は嘲り嗤う。


「子供みたいに泣いて喚いて駄々こねて、挙げ句そんなザマ?

……はっ!!! 馬鹿馬鹿しくてやってられないね」



多分――


久遠には、櫂様の状況が判っている。



「折角、オレが忠告したというのに……」



底冷えしそうな瑠璃色の瞳。


それをそのまま、煌の奥に立つ玲様に向けて。


「負傷した部下がわざわざ此処まで駆けつけたんだ。さっさと帰れば? 帰って現実を見ればいいよ」


そうくるりと私達に背を向けた。

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