あひるの仔に天使の羽根を


「泣かないでよ、煌。あたしは大丈夫だから。この先、あたしと煌と櫂と、きっと3人でいられる日はないだろうけれど、だけど煌は櫂を守って上げてね。櫂はあんたを頼りにしてるんだよ、いつもね」


こんな時まで……櫂を思うのか?


目の前の俺じゃなく…?


「あたしと櫂が"幼馴染"じゃなくなっても、あたしは煌が居るから。煌という幼馴染がいるから、あたしは頑張れる」


そう、無理矢理に笑顔を作った芹霞。


"幼馴染"


哀しい哀しい微笑みに、俺は涙を流すことしか出来なくて。


「何で煌が泣くのよ……」


「………」


「真似しないでよ…、第一あんた男でしょ? 緋狭姉に言いつけるよ?」


「……う、うるせえな。泣きながら、物騒な話すんなよ。普通は慰めるだろうがよ」


「そういうあんたこそ、泣きながら泣いてるあたしに怒るのって変じゃない?」


「泣く泣くうるさいって。女ならそういうことは、黙っていろよ」


「それ差別じゃない。聞き捨てならないね!」


「それを言うならお前だってそうじゃねえか!!」


やっぱり俺達は、すぐに喧嘩腰の会話になっちまうけど、


「ああ、煌が幼馴染でよかったな!!!」


芹霞が笑顔になるのなら。


例え櫂の代わりが望めなくても。


俺という存在が、芹霞の世界の中に組み込まれているのなら。


「だけどよ…」


これだけは言っておきたい。


「俺はお前が好きだ。

ただの幼馴染でいるつもりはねえからな」


「ふへ!?」


「今お前がそのつもりなくても、お前の未来を貰うから。

長期戦覚悟なんで、よろしく」


「!!!」


今頃、赤い顔したって遅いって。

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