あひるの仔に天使の羽根を
 

あたしからけしかけて何だけれど、あたしさえも状況が飲めなくて。


向けられる疑惑の眼差しに、どう対処して良いか判らなくて。


「櫂のおかげで、僕達は付き合えるよ。

ありがとう、後押ししてくれて。

前にも言ったけれど、僕は芹霞を離さないから」


優しげだけど、冷たくも思える玲くんの口調。


笑っているけれど、怒っている端麗な顔。


それは櫂と須臾に向けられて。


あたしの目の前で話がどんどん進んでいく。


不意にあたしの顎に玲くんの手がかけられて。


「これからよろしくね、芹霞」


そうあたしに口付けた。


櫂と須臾の居る前で。


視線を感じる。


凄く感じる、疑惑の視線。


そりゃあそうだ。


あたしと玲くんは付き合う状況にはない。


あたしが恋人なんて、第一そんなの不釣り合いだし、あまりにも玲くんに失礼過ぎる。


だけど優しい玲くんは。


あたしの嘘に乗じてくれた。


何度も角度を変えて重なり合う唇。


もういい。ここまですれば十分だ。


そう訴えた手は、何故か反対に玲くんの手で制され。


本能的危機感を感じて、身体を離そうとした途端、後頭部に回された玲くんの手で、あたしの頭はがっちりと固められ、


「……んんっ!!?」


驚いた拍子に、薄く開いた唇から玲くんの舌までもが入ってきた。

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