あひるの仔に天使の羽根を
 

――変わらない"真実"を見せて下さい。


無感情で非情と謳われる桜が、俺に見せた涙。


――私達を納得させて下さい、櫂様。


俺は昔から訴えている。


須臾こそが唯一無二の女だと。


――私達は、その女(ひと)を櫂様の相手に相応しいとは思いません。


いつでも俺に従順な桜が、初めて俺に相対した。


俺に従うと言いながら、その目は俺に敵対する…玲や煌のような"男"の目で。


現状が、切迫していることを思い知らされる。


俺から仲間が…友が離れていく。


千歳が来て、桜も去り、須臾も出て行った。


今は俺1人。


何が悪い?


どうしてこうなった?


もし…俺が須臾を諦めたら、皆は戻ってきてくれるだろうか。


昔みたいに笑い合えるんだろうか。


煌も玲も桜も。


ああ、芹霞はどうだ?


あいつは戻ってくるか?


そして俺は苦笑する。


ただの腐れ縁の女が戻ってきたからどうだっていうんだ。


だけど。


芹霞の存在が重要だ。


芹霞が居れば、きっと皆の心が安定する。


そうすれば、俺達の仲も元に戻るかも知れない。


< 787 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop