あひるの仔に天使の羽根を
 
「あ……」


床には屍の山。


恐怖に満ちた顔部。


何かが欠損した血色の肉塊。


鉄の臭い。


饐えた臭い。


あたしは思わずその場で吐き出した。


そして顔を上げた時。


「"女"……」


狂気に満ちた眼差しが憎悪に激しく揺れ、


日本刀の刃先があたしに向いた。



怖い。



怖い!!!



あたしは本能的に戦慄し、背後の硝子に振り返ると、ばんばんと叩いた。


「開けて……此処から出して!!!」


しかしその音は厚い硝子に吸収され、あたしの血の跡がつくばかりで。


途端左肩に走る、正体不明な激痛!!


声を上げながら、あたしは泣き叫ぶ。


「お願い、此処から出して、ねえ出して!!」


愉快そうに笑って肩を竦める司狼が、唇で言葉を紡ぐ。


"こ・ろ・せ・ば・?"


指差されたのは、一緒に放り込まれたサバイバルナイフ。


"が・ん・ば・っ・て・ね"


背後から、近づいてくる気配がする。
血に染まった日本刀が――すぐ傍に…。



死にたくない!!



――死ぬのが嫌なら、



あたしの目は、横にあるサバイバルナイフに釘付けで。


――生き残ればいい。



死にたくない!!



男がおかしな擬音語を叫びながら、日本刀を振り上げる。



だから……


――なんて単純明快な解答なんだろうね?


そうだからあたしは――。



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