あひるの仔に天使の羽根を
――向き合え。
あたしが必要なくてもいい櫂なんて、見たくもないよ。
またああいう風に、邪魔者扱いされたくないよ。
だけど確かに――
このままでは駄目だ。
櫂に恐怖したまま、幕は閉じられない。
恐怖の克服が、直視という"理解"であるならば。
あたしは現実を受け入れないといけない。
どんなにあたし達の住まう世界が違おうと、それは元より覚悟していたことなのだし。
"永遠"がない現実を認識したとしても、あたしはそれを受け入れないといけないんだ。
――何故坊だけは受け入れられぬ?
緋狭姉は、櫂のあたしに対する"恋愛感情"を、可能性の1つとして示唆したけれど、正直あたしはそれは受け入れられない。
ありえない。
――何故坊だけは受け入れられぬ?
確かに緋狭姉の言う通り。
大いなる戸惑いはあるにせよ、煌に対しても玲くんに対しても、あたしは向けられた恋愛感情を否定する気はない。
正直嬉しいと思うし、応えられるようであれば応えたいと思う。
確かにあたしは、彼らを意識し始めている。
それは、彼らとの絆を深める1つの手段だと許容しているから余計に。
どうして――
それを櫂には求めないんだろう。
もし仮に、櫂にあたしに対する"恋愛感情"があったとして。
どうしてあたしはその可能性を認めたくないのだろう。
永遠がなくても深まる絆なら、それを櫂に求めてもいいんじゃないか。
永遠に、そこまで固執しなくてもいいんじゃないか。
だけど。
永遠がない恋愛なんて、櫂には求められなくて。
永遠ではないものを、櫂に欲することは出来なくて。
刹那の"好き"を、櫂には求められなくて。
――ナゼ?