あひるの仔に天使の羽根を


――向き合え。



あたしが必要なくてもいい櫂なんて、見たくもないよ。


またああいう風に、邪魔者扱いされたくないよ。



だけど確かに――


このままでは駄目だ。



櫂に恐怖したまま、幕は閉じられない。


恐怖の克服が、直視という"理解"であるならば。


あたしは現実を受け入れないといけない。


どんなにあたし達の住まう世界が違おうと、それは元より覚悟していたことなのだし。


"永遠"がない現実を認識したとしても、あたしはそれを受け入れないといけないんだ。



――何故坊だけは受け入れられぬ?



緋狭姉は、櫂のあたしに対する"恋愛感情"を、可能性の1つとして示唆したけれど、正直あたしはそれは受け入れられない。


ありえない。


――何故坊だけは受け入れられぬ?


確かに緋狭姉の言う通り。


大いなる戸惑いはあるにせよ、煌に対しても玲くんに対しても、あたしは向けられた恋愛感情を否定する気はない。


正直嬉しいと思うし、応えられるようであれば応えたいと思う。


確かにあたしは、彼らを意識し始めている。


それは、彼らとの絆を深める1つの手段だと許容しているから余計に。


どうして――

それを櫂には求めないんだろう。


もし仮に、櫂にあたしに対する"恋愛感情"があったとして。

どうしてあたしはその可能性を認めたくないのだろう。


永遠がなくても深まる絆なら、それを櫂に求めてもいいんじゃないか。


永遠に、そこまで固執しなくてもいいんじゃないか。


だけど。


永遠がない恋愛なんて、櫂には求められなくて。


永遠ではないものを、櫂に欲することは出来なくて。


刹那の"好き"を、櫂には求められなくて。


――ナゼ?

< 976 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop