あひるの仔に天使の羽根を

・回復 桜Side

 桜Side
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目覚めた時、私は闇色に染まった空の元、木陰で紅い球状の結界の中に横たわっていた。


艶然と微笑む赤い美女の姿を目にして、私は緋狭様に助けられたのだと理解した。


彼女が此の地にいることに違和感と不安を感じながらも、彼女がいるのなら、芹霞さんは大丈夫だという安心感がそれに勝り、私は安堵の息をつく。


上体を起こして頭を垂らそうとした時、突如凄まじい嘔吐感と目眩に襲われて、地面に伏せってしまった。


――コロセコロセ。


複数の声が不意に聞こえて、私は身構えた。


途端。


景色がぐにゃりと歪み、場面が変わる。


視界一杯に真紅色が拡がったと思うと、裂くようにまた新たな情景が現れた。


――ドウシテ?


荒野に佇んでいた私。


嗅ぎ慣れた死臭と…鉄の臭い。


これは私の過去か?

それとも現在か?


手にあるのは裂岩糸。


私の全身は、他人の血飛沫で赤く染まっている。


――ネエドウシテ?


私の足下に積まれているのは、夥しい…かつて人型であった肉の塊。


何の感慨もない、人間の成れの果て。


憐憫も後悔もない。


彼らは皆、私に敵わなかった。


これは当然の事象だ。


私は屍を踏みつけ、歩いて行く。




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