その先へ
席に座ろうとすると、


「俺窓側〜」


とタキが後ろから押しのけて席に着いた。


「何するんだよ!?」

「俺、酔いやすいんだよ」

「ウソつけ!!」

「バレたか…」


それでもタキは席をどこうとしないので諦めて通路側に腰掛けた。

誰かに見られている気がして、前に視線を向ける。ハッとして鞄からある物を取り出した。


「はい」

「何それ?」

「預かり物」


そう言って渡したのはさっき頼まれたクッキー。


「誰から?」

「あの子たち」


そう言いながら指差した先にはこちらをジーッと見ている女子たちが。

タキと目が合うと彼女たちはキャーキャー騒ぎながら自分たちの席へ戻って行った。

タキが顔を引きつらせ僕の方を向く。思わず似たような顔で返した。


「お前食っていいよ」


ため息混じりにそう言うとタキは窓の外を眺め始めた。僕は彼女たちに聞こえないような小声で、


「困るよ。渡してって頼まれたんだから」

「困るような物頼まれるなよ」

「仕方ないじゃん、もらってよ」

「いらない」

「あの子たちはタキの為に作ったんじゃん!?」

「お前はどう思うんだよ?」
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