その先へ

第10歩

部活が終わり部室を後にする僕。カノンからの連絡は依然としてない。

自分から拒絶しておいてもしかしたらどこかど待っているのではと淡い期待をしていた。

無論、そんなことはなく帰宅の途に着いた。



家に着くと、リビングには寄らず真っ直ぐ自分の部屋に向かった。
母とは昨日の口論から口をきいていない。一緒にいたとしても気まずいのは明らかだ。

部屋に入り着替えを済ませた時、机に置いてあった携帯が鳴った。
着信元はカノン。僕は瞬時に出るべきか出ないべきか葛藤していた。


悩んでいるうちに電話が鳴り止んだ。安堵感と焦燥感が入り混ざった何とも言えない気持ちで携帯を開き着信履歴を見る。

カノンという文字をジーッと見ながらあることを考えていた。

このままでいいのだろうか。

このまま避け続けたところで何か変わるのだろうか。

そうしてまで彼女から離れたいのだろうか。

今僕が彼女にするべきことはこんなことではないはずだ。

僕はある決意を胸に発信ボタンに手を掛ける。


その時、再び電話が鳴った。驚き慌てた僕は誰かを確認することなくボタンを押していた。恐る恐る携帯に耳を当てる。
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