逢いたい夜は、涙星に君を想うから。


抱きしめてくれた彼の腕をほどいて、あたしが電車に乗り込もうとした時。



彼は後ろから、あたしの手を掴んでくれた。



最後まで優しい彼の手を。



この手を離したくないって、思ったよ。



だけどね、手を離したあとに、あたしは気づいたの。



彼が優しい嘘をついてくれたこと。



『いつかまた……逢えるよな?』



彼はそう言った。



“いつかまた”なんてない。



橘くんもわかってるはず。



あたしたちはもう……きっと、二度と逢うことはない。



だって、あたしたちが



いつかまた再び逢うための理由なんて、どこにもないのだから。



『いつかまた……逢えるよな?』



それが彼の最後の優しさで、



サヨナラの言葉だったんだよね……?
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