逢いたい夜は、涙星に君を想うから。


図書室でパンを食べながら、橘くんと一緒に昼休みを過ごした。



「橘くん、昨日は本当にありがとう」



あたしは笑顔を見せた。



「咲下……大丈夫?」



「うん。先のことは考えると不安で、どうなるかもわかんないけど。でもいまはお母さんのことだけ考えることにした」



「ん……」



あたしは缶ジュースを一口飲んで、窓の外を見つめる。



「あたしね……いまになって本当に嘘つくことがよかったのか、わかんなくなってきちゃったんだ」



「嘘って……お母さんに本当の病気と余命のことを話さなかったこと?」



「そう。何も本当のことを知らずにお母さんは死んでいくんだよね……。最初はお母さんのためだと思って嘘をついたけど、それって本当に正しかったのかな……」



いまはもう、お母さんはあたしのこともわからなくなってしまった。



1日中、眠ってばかりいる。



いまさら後悔したって、もう伝えることも出来ないんだけど、



あたしが嘘をつくと決めたことは、間違いだったのかなって……。



「お母さんのこと……誰よりわかってるのも、誰よりも想ってるのも咲下じゃん……だからこれでよかったんだよ」



「橘くん……」



彼はあたしを真っ直ぐに見つめて言った。



「どっちが正解かなんて、わかんないけどさ。でも咲下が決めたこと、間違いだったなんて俺は思わないよ」



「ありがとぉ」



橘くんはそうやっていつも、あたしを救ってくれるね。



「でもね、もしあたしがお母さんに本当のことを話してたら……産んでくれてありがとうって。死んでもお母さんのこと大好きだから、寂しいって思わないでねって……そう言えたのになって……」
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