TENDRE POISON ~優しい毒~


「先生だから、初めてキスもしたのに。先生はあたしの冗談だと思ってたんだ」


鬼頭の鋭い刺すような視線を感じながら、僕はたじろいでいた。





気をつけろ。


また、まこの言葉が蘇る。


はっきりと、鮮明に。


まるでまこに近くから見張られているようだった。


彼は言うだろう。



「しっかりしろ。お前それでも教師か?」と。



そう、僕は教師だ。



生徒の好意に応えることはできない。






「ごめん。気持ちは嬉しいけど、僕は君の事を大切な生徒としか見てないんだ」


鬼頭は瞬きをすると、肩をそっと撫で下ろした。



「最初からそんなこと知ってたよ。受け入れてくれることがないってわかってたからちょっと意地悪言っただけ」


ため息を吐いて、瞳を伏せる。


長い睫が頬に影を落としていた。




伏せられた瞳のまぶたがわずかに震えている。


眉も寄せられて、ひどく哀しそうだった。




こんな表情の鬼頭を見たことがない。







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