TENDRE POISON ~優しい毒~


「おじゃま♪」


梶は強引にあたしの傘に入り込んでくる。


「ちょっと!」


「固いこと言うなよ。駅までだから。な?」


「駅までね」


面倒だけど、それ以上に断るのも面倒。そう言うことで、あたしたちは肩を並べて歩き出した。




でもあたしの小さな傘じゃ二人入るのはやっぱり無理で、駅につく頃はべたべたに濡れていた。


梶に文句を垂れながらも濡れたまま電車に乗り、何とか家に着く。





鍵を開けようと、鍵穴に鍵を差し込んだけど何か違和感があってあたしはドアノブを回した。


「あれ?開いてるや。あたし家出るときちゃんと閉めたはずなのに」


あたしの両親は海外で仕事してる。


だからこの家にはあたし一人。


な、筈なのに……




玄関には見慣れた男物の靴があった。


あたしは急いで玄関に上がると、リビングまで走って行った。





扉を勢いよく開ける。





「明良兄!」あたしは笑顔でお兄を呼んだ。






「よっ!」


明良兄はソファにあぐらを掻いてくつろいでいた。






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