TENDRE POISON ~優しい毒~



「僕が水をこぼしちゃったから、着替えてももらった。それだけだよ」


「そうか」


まこは短く返事を返して、それ以上は深く突っ込んでこず、再びビールに口をつける。


「食わないの?パティスリーメゾンのケーキ。お前ここの店のケーキ好きだったろ?」


そう言ったまこはいつも通りのまこで、別段僕が彼女を家にあげたことを怒ってる風でもなかった。




僕はまこの隣に腰を降ろし、ケーキの箱を開けた。


箱にはいちごのショートケーキに、ガトーショコラ、ニューヨークチーズケーキが入っている。


僕が好きな種類のケーキばかりだ。


何にしようか迷ってると、にゅっと手が伸びてきてガトーショコラが手で掴まれた。


まこは手づかみでガトーショコラを口元に運ぶと豪快に口をあけてがぶりと一口いった。


「お前、明日のこと覚えてるだろうな?」


ガトーショコラを食べながら、まこが言った。


手についたチョコを舐め取る仕草にどきりとしてしまう。


僕は慌てて目を逸らした。


そして別のことを考える。




なんだ。そのことを確認しにわざわざ来たのか。





「覚えてるよ。合コンのことでしょ」






< 134 / 494 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop