TENDRE POISON ~優しい毒~



元気だったらこれを着て遊びにでも行ってたのかな?


そんなことを考える。


元気だったら、普通の高校二年生として勉強にスポーツに―――恋に一生懸命だったはずだ。


それを考えると、やりきれなかった。





結局通り過ぎた女性看護士さんをつかまえて、僕は牛乳の空き瓶をもらうことにした。


チューリップの束を空き瓶に入れると、僕は楠の病室を後にした。




――――


学校に着くと、職員室が何やら賑やかだった。


「どうしたんですか?」


僕は、まこ以外に一番仲がいい和田先生を捕まえると聞いた。


「先生!これって本当なんですか?」


和田先生は勢い込んだ。その剣幕に押され僕は思わず一歩後退する。


「これって?」


「見てくださいよ」そう言って先生たちで束になっている群れを掻き分けた。


その先には一台のノートパソコンがある。


パソコンは学内のホームページが開かれていた。


学校の新聞部が開設しているホームページで学校の出来事を面白おかしくゴシップ調に書き立ててあるから、生徒たちには結構な人気だ。


だがしかし書かれた方は誇張しすぎた記事を迷惑だと思って恨んでいる人間もいるに違いない。


そのホームページに自分が載っているなんてこのときまでは夢にも思わなかった。



ホームページの一面に、僕の写真が載せられている。


鬼頭も一緒だ。



鬼頭が僕に卵焼きを食べさせるシーンがドアップで映し出されていた。


見出しに、


『禁断の恋!イケメン数学教師と秀才美少女』と大げさに赤字で書かれていた。




これ―――!?


昨日の!!







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