TENDRE POISON ~優しい毒~
僕はケータイを手に目を瞬いた。
~♪
「どうしたの?ケータイ鳴ってるよ。出ないの?」
鬼頭が訝しげに聞いてくる。
「……うん、ちょっとごめん」
僕は鳴り続けるケータイを手に寝室に向かった。
ピッと通話ボタンを押して耳にあてる。
『…も…もしもし…』
受話口から控えめなエマさんの声が聞こえてきた。
「もしもし」
『ごめんね、電話なんてしちゃって』
「いいよ。どうかした?」
声が小さくなるのはやっぱり鬼頭が隣の部屋にいるって意識しているからだろうか。
別に浮気してるとかそんなことじゃないのに、どうしても後ろめたい。
『……あの、クリスマス!』
「クリスマス?」
『うん。24日って空いてないかなって思って……』
クリスマス……そう言えばもうそんな時期だっけ。
クリスマスイブは予定がなかった。
だけど……クリスマスイブを一緒に過ごすってことは、恋人になるってこと前提だ。
「……ごめん」
僕は小声で謝った。
声が小さくなるのは、エマさんに申し訳ないと思うのか。
今隣室にいる鬼頭に対して後ろめたい気持ちがあるのか。
どちらなのだろう。