TENDRE POISON ~優しい毒~

さっきの海で抱きしめられたときと違う。


もっと激しくて、苦しいぐらい。





体温が、息遣いが、心臓の音が……全てが今まで感じたことがないぐらい近くにある。


怖い……


とは微塵も感じなかった。


でも……



「……先生?」


あたしがおずおずと問いかけると、


「こうゆうこと。鬼頭といると……自分を制御できなくなる」



神代はあたしの頭に顎をのせて、また切なそうに小さく呟いた。


あたしは神代の胸の中で目をしばたたいた。


神代の心臓はあたしよりずっと早く脈打っていた。




「それって……あたしを好きだってこと?」


「好きじゃない子とはこんなことしない」



恥ずかしいのか、緊張を和らげるのか神代は空咳をして囁いた。




これって神代の告白ととっていいのかな?



神代があたしを好き……?



ちょっと前までは保健医を好きだったのに、男って分からない。



ううん、あたしだってあんなに憎んでたのにいつの間にか神代を好きになってた。


人間って分からないね。














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