TENDRE POISON ~優しい毒~
「今日―――計画の最終段階を実行する」
深呼吸してたっぷり含ませたあと、あたしは静かに言い放った。
『雅……、お前何をするつもりだ?俺には教えてくれよ……』
「ごめん、今はまだ教えられない。明良兄に頼みたいことがあるんだ」
『頼みたいこと?何でも言えよ。だけど、お前を危険にさらすんだったら、呑めないけどな』
相変わらず優しいね。明良兄は……
でも優しさは時としてとても残酷になる。
明良兄の言葉で決心が揺らがないように、あたしは早口にまくしたてた。
「落ち着いたら、保健医の例の写真を処分して。そのことを保健医に伝えてあげて。あと、梶にも……あたしのクラスの梶田 優輝にもホントのことを話して。
彼にはひどいことをしたから……」
一瞬の間があった。
電話の向こうで、明良兄が何事か考えてるのが分かる。
でも考えるのを断念したのだろう。
『分かった。俺ができるのはそれだけ?』
「うん。それだけやってくれれば十分」
明良兄……
今まであたしに協力してくれたただ一人の協力者であり理解者。
乃亜姉という存在があたしたちを強い絆で結びつけ、また引き離す運命にもある。
ごめんね明良兄。
ごめんね……