約束の日
男には分かっていた。

こんなことでこだわっていても、何の意味もないことを。

しかし、こだわらずにはいられなかった。

おかげで、本来かからなくても良いはずの時間が

虚しく過ぎ去っていく。

机の上に置かれた目覚まし時計に目をやる

「うわ!…やべ…急がないと!」

男はある「約束」をしていた。

約束の時間は午後9時。

残り1時間。

どうしても「これ」だけは完成させなければならない。

かと言って

あまり急いで事を運べば

満足のいく成果は得られはしない。



思考を十二分に回転させながら

男は再び、紙にペンを走らせる。
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