約束の日
これを渡すために

「あの女」が住む、このマンションに引っ越した。

成功者であり、恵まれた生活を送る「あの女」とは対照的に

男の生活は、このマンションに越してきたおかげで酷く困窮していた。

安定しているとは言えない収入の中からマンションの賃料を支払うと

ほとんど手元に残らない。

徹底的に切り詰めた生活。

もう何日も着続けてシワの寄ったシャツ。

ボロボロになったスエットのズボン。

夜でも最低限の明かりしか燈さない部屋。

何かを書くには決して適さない環境の中で

男はただひたすら理想の文を追い求め、

時は、流れる。
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