クリスティアナ

王女ならば

数日が経ち、クリスは少しふらつくものの支えなしで歩けるようになった。



「腕の傷はわたしの魔法をもってしても残ってしまいますね」



若干えぐられたような傷跡に薬を塗りながらガラムは言った。



「これくらいかまわないです」



国王陛下の従兄弟なのでクリスも敬語を使っている。



「かまわないか……女性なら少しの傷でも大騒ぎだろうに」



「俺は男として育てられたから これからもそう生きるつもりです」



ガラムの薬を塗る手が止まった。



クリスはどうしたのかと顔を上げると、深いダークブルーの瞳と目があった。



「貴方は男として生きられません 周りが放っておかないですよ」



「なっ!なにを言っているんですか!?」



「見事なストロベリーブロンド、真っ青な空の色の瞳、髪に負けないくらいのイチゴのような唇 どれをとっても貴方は女性で注目を浴びてしまうでしょう」



ガラムの言葉にクリスは驚きと恥ずかしさが入り混じり、頬を赤らめた時、咳払いが聞こえた。



「ガラム、愛する奥方がいるというのに口説いているのか?」



ルーファスだった。



後ろにロイドもいる。



「いいえ、口説いているのではありませんよ 彼女に生き方を諭していたのです」



ガラムは少し慌てた表情を見せて弁解した。



珍しく慌てているな 俺には口説いているようにしか聞こえなかったぞ?



「まあいい 本当に愛らしい娘だからな」



ルーファスはなおも弁解しようとするガラムを制して言った。



< 81 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop