永遠の人
桜の咲く頃


季節は春。


頬を通り過ぎて行くそよ風が私に優しく微笑みかけていた。

満開の桜の樹の下で私は真っ青な大空を見上げ、何か良い事が起きる予感を感じていました。

昨日までの私とは決別し、新しい自分探しの旅が始まるかのように。

家庭崩壊・いじめ・登校拒否・引きこもり・そして、自殺未遂…

絶望のどん底で私が見たものは、遥か遠くに見える微かな光りでした。

あまりにも遠くて小さな光りを、私は両手を思い切り伸ばし必死に掴もうとしていた。


ただ未来だけを信じて。


そんな私を母はいつも優しく見守り続けてくれました。

自分が離婚で大変なのに

「大丈夫、明日はきっといい事あるから!」

いつも前向きで笑顔を絶やしませんでした。

やっぱり家族っていいな。

私はその時つくづく感じました。


そんな母に付き添われて、私は京都市立伏見工業高校の建築科の入学式に出席するのでした。


< 1 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop