ミルクティー
「海斗が、消えた…」



現実を受け止めるまで時間がかかった。

部屋を見渡しても、

何も無い。


玄関の靴箱を開けて見ても、

「空っぽ」


そして残されているのは、私の目の前にあるカップの中のミルクティーと海斗からの手紙だけ。



「海斗、海斗…

行っちゃイヤ。

お願いだから帰ってきてよ」


どう泣き叫んでも、海斗は戻ってこない。



「海斗、海斗…


私海斗に伝えたい気持ちがあったのに、聞いていないじゃん。

私は、私は…

海斗の事が好きなのに」



海斗の部屋で好きと言っても通じる訳ではないのに、

届くわけでもないのに…



「海斗、海斗…好きだよ。

海斗以外、好きになんてなれないよ」



居なくなると分かっていたなら、伝えておくべきだった。

私は1人で海斗の部屋で泣いていた。



「雛那…」


「お兄ちゃん?」



海斗の部屋に現われたのはお兄ちゃん。



「お兄ちゃーん、海斗が、海斗が…」


「分かっているから、わかっているから…」



私はお兄ちゃんに促され、海斗が最後に淹れてくれたミルクティーを飲んだ。



そのミルクティーは甘かったけど、

少ししょっぱかった。



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