キミを想うトキ
「ねぇ。」

「ん?」




部屋に戻って来た飴玉男に
あたしは静かに尋ねた



「荷物、片付けないの?」


以前と変わらない部屋にあたしは疑問を抱いていた



明日から違う場所で暮らしていくのなら
ダンボールの一つや二つあるのが普通だろう


だけどこの部屋にそれらしき形跡は全く見当たらなくて
飴玉男が居なくなる


それは十分わかっているのに
あまりの変化のなさに実感が湧かないあたし




そんなあたしの言葉に

「あぁ…」
とため息混じりの笑顔を溢して



「荷物はもう送ったよ。元々荷物少ないし…

家具とかは向こうで父さんが揃えておくって。」


そう言った



「ふぅん……」



ポツリと呟いて
甘いオレンジジュースを一口含む



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