ちょっと怪談してみたい
 夕方の農村地帯に真っ赤な夕焼け。


「ねえ、まさくん。お蔵にいた、真っ白な頭の人、だれだったの?」


 子供の時は女の子の方が胆力がある。


 鏑木多留美もその手合いであるので、進んで村人に近づいて行った。


「御神仏だったなら、ごあいさつしなくてはならないのでは?」


 そんな風につられたように言うと、農家のひとは腰を上げて、額の汗を首からかけた手拭いで拭った。


「さあー、見たこともないからねー。だが、子供たちに聞いてごらん。白い髪の毛を逆立てさせて振り乱した、真っ白の装束と言えば間違いない」


「では、幻、ではないと……」


「小角があったんです。真っ赤な口唇をしていました。どう考えてもあれは……」


 農家の人は背を向けつぶやくように、いまわしそうに、恐れるように言った。


「むかーし、戦争でとられた息子を待つうち、家から一歩も出なくなり、どこからか来る……こんなこっちゃわからねえが、遺族年金だァな。まあ、小金を集めるのに夢中になってた、あの村はずれのババサマだったら、鬼にもなろうよ」


―第二話、終わり―
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