ちょっと怪談してみたい
 その辺に雑多とあったススキ野原での野宿の後。


 朝にその寝袋から眩しそうに顔を出して東雲 昌(しののめ あきら)が言った。


 同じく十六歳のクラスメイトの堀田 薫(ほった かをる)もガムを噛みながら言った。


「昨夜は妙だったな」


「ああ。なんで手足が擦り傷だらけになってるんだろう」
 

 明晰な堀田は自分の体をじっくり見ているが、こんなとき、決まって大騒ぎをするのは
鏑木 功(かぶらぎ いさお)。


「うげ、自転車の車輪にススキが巻き込まれて動かない!」


「オレらのも!」


 三人はそれぞれ富豪と呼ばれた農家の出で、いかにも世間知らずだった。


 彼らのいたススキ野の土手を登ると、そこには一体のお地蔵様が、祠もなく野ざらしになっていた。


 彼らは誰からともなく、


「なんでこんなところに……」


 三人は同時にいやな気分を味わった。


 そのお地蔵様、実は何度もなんども、彼らのもとに訪れたのである。


 いや、三人が見かわしたところ、平たい石を積んだそのてっぺんに、真っ白く丸っこい石が乗っている。


 他、マッチとマルボロライトが朝露に濡れてしんなりくすぶっていた。


 鏑木は例のごとく、いちはやく問題のありかを導き出す。


「この石はおれが置いたヤツだ」


 丸い石をさして大仰に驚いた。


 続き、東雲が指し示す。


「このマッチはオレんちのペンションで取り扱ってる奴だ」


 頭をがりがりやりながら、


「ちなみに兄貴からくすねてきたマルボロライト、はオレっちだ」


 と、悪びれもせず、吸いさしを拾い上げた。

 
 もったいなさそうに草の上にポイ捨て。


 東雲は、


「子供を守る地蔵菩薩に煙草はミスマッチだ」


 すると堀田はいつものようにキレ気味に、ぶつけるように言った。


「線香がわりだよ。マルボロ好きな菩薩様かもしれないだろう」




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